退職金:15年後のインフレ影響を試算し、「窓際FIRE」の現実を考える
退職金制度の現状
日本の大企業では、退職金制度が多様化しつつも、従来の枠組みを引き継いだ形で運用されています。近年は、社員自身が運用に関わる制度が増えつつあります。
制度構成の主流:
従来の「退職一時金制度」に加え、確定給付年金(DB)や確定拠出年金(DC)を組み合わせた併用型が一般的です。
特に、従業員が自ら運用するDC制度の導入が急速に進んでいます。給付水準の傾向:
製造業では比較的高水準にある一方で、グローバル競争の激化や親会社(完成車メーカー)の制度変更を背景に、年功的な給付カーブは緩やかになりつつあります。
インフレの脅威:退職金の「実質価値」の目減り
「窓際FIRE」を目指す上で重要なのは、受け取る退職金がどれほどの購買力を維持できるかを理解することです。
多くの企業の退職金制度はインフレに自動連動していないため、物価上昇が続くと退職金の実質価値が減少します。
15年後の退職金の実質価値を試算
(インフレ率3%が継続する場合)
たとえば、15年後に退職金2,000万円を受け取る予定としましょう。
このとき、インフレ率3%が15年間続いたと仮定すると、次のような結果になります。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 将来の退職金(名目額) | 2,000万円 |
| 想定インフレ率 | 3% |
| 期間 | 15年 |
| 15年後の実質価値(現在の購買力換算) | 約1,284万円 |
2,000万円という名目額は変わらなくても、実際の購買力は約716万円も失われることになります。
この差こそが、インフレの「見えないリスク」です。
「窓際FIRE」を実現するための戦略的アプローチ
退職金の実質価値を守り、「窓際FIRE(退職金や自己資金を早期退職後に運用しながら生活基盤を維持する)」を現実のものにするには、以下の2つの戦略が重要です。
1. 制度を活用したインフレ対策
確定拠出年金(DC)の積極活用
DC制度は運用成果によって給付額が変わります。
インフレに強い株式や成長資産を組み入れることで、名目価値・実質価値の両方を高めることが可能です。運用先の見直し
企業年金やDCで元本確保型(預金など)に偏っている場合、
インフレ率を上回るリターンを目指せる資産への配分見直しを検討しましょう。
2. 資産運用による退職金の「成長」
退職金の一部を、インフレ率(3%)を上回るリターンで運用することが欠かせません。
年率5〜7%の成長を目標に、長期・国際分散投資を行うことで、
実質価値の維持と「FIRE達成」に近づくことができます。
結論
東証プライム上場企業に勤める方にとって、退職金は人生の大きな資産です。
しかし、インフレが進む時代において、退職金を「そのまま受け取る」だけでは購買力の維持は難しいでしょう。
「窓際FIRE」の実現には、
インフレ率3%を最低ラインとして意識すること
DC制度や資産運用を活用し、年率5%以上のリターンを目指すこと
この2つを軸にした戦略的な資産形成が不可欠です。

