【お金の量と経済の規模】世界でなぜ「お金」がこんなに増えているのか?

 

【お金の量と経済の規模】世界でなぜ「お金」がこんなに増えているのか?

過去最高を更新した「お金の量」

最近、「マネーサプライ」(世の中に流通するお金の総量)が、私たちの経済活動の規模(GDP)に比べて非常に大きくなっていることが話題になっています。

ご提供いただいたデータ(2025年第3四半期)によると、世界全体の広義のマネーサプライ対GDP比率は、過去最高の121%に達しました。これは、経済が生み出す価値(GDP)1ドルに対して、世の中に1.21ドルのお金が存在していることを意味します。

この比率が上昇している背景には、2008年のリーマンショックや2020年の新型コロナウイルスのパンデミック以降、世界の中央銀行や政府が経済を支えるために行ってきた積極的な金融緩和や財政出動があります。


1. 「広義のマネーサプライ対GDP比率」って何?

まず、この比率が何を示すのかを簡単に整理しましょう。

● 広義のマネーサプライ(M2/M3)

世の中に存在する「お金の総量」を指します。現金に加えて、銀行預金や、すぐに現金化できる金融資産(定期預金など)も含まれます。

● GDP(国内総生産)

国内で一定期間に生み出された商品やサービスの付加価値の総額です。いわば「経済規模」を表します。

● 比率の意味

(マネーサプライ ÷ GDP)が高いほど、
「経済が生み出す価値に対して、流通するお金の量が多い」状態を示します。


2. 日本は世界トップ!国によって大きく異なる「お金の量」

世界平均は121%ですが、国ごとの比率には大きな差があります。

下記のグラフを見ると、特にアジアの国々で高い水準となっていることがわかります。

順位国/地域比率(2025年Q3)
1位日本256%
2位台湾247%
3位中国243%
4位韓国171%
5位スイス149%
世界平均World121%
14位アメリカ73%

特に日本は256%と、世界の主要国の中で突出して高い水準となっています。これは、長期間にわたる大規模な金融緩和政策や、国民の現預金保有が多い傾向などが背景にあると考えられます。

一方、アメリカ(73%)や一部の発展途上国(例:アルゼンチン21%)など、世界平均を下回る国も存在します。


3. なぜ「お金」は増え続けているのか?

比率が上昇している最大の理由は、中央銀行と政府による景気対策です。

● 金融緩和政策

中央銀行が金利を引き下げたり、国債などの資産を買い入れたりすることで資金供給を増やし、銀行から企業・個人への融資が増えました。その結果、マネーサプライが拡大しました。

● 財政出動

政府が個人への給付金、企業への補助金などを実施。これらが国民の預金口座へ流れ込み、さらにマネーサプライを押し上げました。

これらの政策は経済危機からの回復を支えましたが、結果として「経済規模を超えるほどの資金」が市場に供給された形になっています。


まとめ:増えすぎた「お金」の今後

マネーサプライがGDPに対して過度に増大する状況は、さまざまな議論を呼び起こします。

想定される影響

  • インフレ(物価上昇)リスク
    お金が多すぎると、需要が供給を上回り、価格が上がりやすくなります。

  • 資産価格の上昇(バブル)
    行き場のない資金が株式・不動産に流れ込み、実体経済と乖離した価格上昇が起こるリスクがあります。

  • 金融システムの安定性リスク
    預金などが多い「金融の深さ」を示す良い側面もありますが、過剰流動性は将来的な不安要因にもなり得ます。


各国の中央銀行は、この過剰な流動性をどう管理し、安定的な経済成長につなげていくかという難しい課題に直面しています。

今後、「お金の量」と「経済の規模」のバランスがどのように変化していくのか――引き続き注目していく必要があります。