インフレ時代に「配当・利息を生まない」ゴールドが価値を持つ理由
はじめに:「配当や利息がない」って本当にダメ?
投資の世界で「ゴールド(金)」が話題になると、必ずと言っていいほど聞く枕詞があります。
それは――
「配当や利息を生まない」
というものです。
株のように配当金が出たり、銀行預金のように利息がついたりしないため、「持っているだけではお金が増えない」というイメージがあるかもしれません。
しかし今の時代、この「配当や利息を生まない」という考え方こそ、少し見直してみる必要があるかもしれません。
特に「インフレ(物価上昇)」が起きている現代では、ゴールドの価値を柔軟に考えることが大切です。
1.信用貨幣とインフレの仕組み
まず、私たちの身の回りにある「お金」について考えてみましょう。
私たちが普段使っている日本円や米ドルといった紙幣やデータのお金は、「信用貨幣」と呼ばれます。
<信用貨幣とは>
- 国や中央銀行の「信用」によって価値が保たれているお金
- 金(ゴールド)のように、それ自体に物質的な価値があるわけではない
- 必要に応じて、国や中央銀行が新しく発行(印刷)することができる
<インフレと信用貨幣の価値の希釈>
インフレとは、物の値段が上がり、お金の価値が下がってしまう現象です。
なぜお金の価値が下がるのでしょうか?
現代のインフレ時代では、世の中の財(モノ)やサービスの量よりも、「信用貨幣(お金)」の量の方がどんどん増えていきます。
- 信用貨幣が増える
↓ - 財やサービスに対するお金の量が増えすぎる
↓ - 結果として、お金一つあたりの価値が薄まってしまう(希釈される)
これを例えるなら、「お餅の数」に対して「お餅を買うためのチケット」がどんどん増えていくようなものです。
チケットが増えすぎると、一枚のチケットで買えるお餅の量が減ってしまいますよね。
2.「リアルマネー」としてのゴールドの価値
ここで登場するのが、ゴールドです。
ゴールドは「リアルマネー(本物のお金)」とも呼ばれます。
- 世界共通の価値として認められている
- 地球上に埋蔵されている量に限りがあり、中央銀行が勝手に増やすことはできない
つまり、信用貨幣のように価値が薄まっていく(希釈される)ことがない、「価値の基準」として機能する性質を持っているのです。
3.考え方を変える!「配当・利息」の裏側にあるリスク
ここが本記事の最も重要なポイントです。
「配当や利息を生まないゴールド」という表現は、
信用貨幣(円やドル)の価値がずっと安定している」という前提に立った考え方です。
しかし、インフレによって信用貨幣の価値がどんどん目減りしていく時代においては、次のような事態が起こる可能性があります。
● 銀行預金の例
- 利息が1%ついたとします。
- しかし、インフレ率が2%だとします。
- 結果として、あなたの資産は「利息」で増えた以上に、お金自体の価値が目減り(実質的なマイナス)してしまいます。
● 株式投資の例
- 配当金を受け取ったとします。
- しかし、その配当金を受け取る頃には、受け取ったお金の購買力(モノを買える力)が、インフレによって減ってしまっている可能性があります。
つまり、インフレ時代においては、
「配当や利息を加えても、信用貨幣の価値の目減り(希釈)の方が上回ってしまい、結果的に資産が目減りしていく」
ということが十分にあり得るのです。
まとめ:柔軟に考えるべし
「配当や利息を生まない」という一見ネガティブな言葉は、信用貨幣の価値に囚われた見方だと言えるでしょう。
むしろ、ゴールドは「それ自体が希釈されないリアルマネー」として、資産全体の価値がインフレで目減りしていくのを防ぐ役割(ヘッジ)を果たすことができます。
投資において大切なのは、時代にあわせて柔軟に考え方を変えることです。
インフレが続く現代においては、「配当や利息」に加えて、
「お金自体の価値が目減りしていないか」
という視点を持つことが、資産を守るための第一歩になります。