「紙の銀(先物)」と「本物の銀(現物)」 銀ETFのSLVはどちらに該当しますか?
結論から申し上げますと、iShares Silver Trust(SLV)は「中間に位置するが、個人投資家にとっては実質的に『紙の銀』に近い」というのが、最も誠実な回答になります。
なぜそう言えるのか、そのカラクリを初心者の方にも分かりやすく解説します。
1. SLVの「建前」と「現実」
SLVは「現物裏付け型ETF」と呼ばれます。
建前(現物): SLVを運用するブラックロック社は、「皆さんが買った株の分だけ、ロンドンの倉庫に本物の銀の延べ棒を保管しています」と説明しています。
現実(紙): しかし、あなた(個人投資家)がSLVの株を売ってお金に戻したい時、受け取れるのは「銀の現物」ではなく、常に「現金(ドルや円)」です。
つまり、あなたにとっては「銀の価格に連動する証券」を売り買いしているに過ぎず、手元に銀が届くわけではありません。これが「紙の銀」と言われる所以です。
2. 「現物」に引き換えられるのは「選ばれし者」だけ
「倉庫に銀があるなら現物と同じじゃないか」と思うかもしれませんが、ここには大きなハードルがあります。
SLVの規定では、「銀の現物との引き換え」ができるのは、指定参加者(Authorized Participants)と呼ばれる巨大な金融機関(JPモルガンなど)だけです。しかも、引き換える際の単位は「5万株(バスケット単位)」といった、個人では到底不可能な莫大な量に設定されています。
たとえるなら…
SLVは**「高級ステーキ店の引換券」**のようなものです。
プロの業者は厨房に入って肉を持ち帰れますが、一般のお客さんは「その引換券を別の人に売ってお金にする」ことしかできません。お店が「肉がなくなった!」と言い出したら、手元の引換券はただの紙くず(あるいは大幅な安値)になるリスクがあるのです。
3. 「紙の銀」としてのリスク:SLV vs PSLV
銀の投資家の間では、SLVと対比されるものとしてPSLV(スプロット・フィジカル・シルバー・トラスト)というETFが有名です。これらを比較するとSLVの「紙」っぽさがより鮮明になります。
| 特徴 | SLV (iShares) | PSLV (Sprott) |
| 保管場所 | 主にJPモルガンなどの民間銀行 | カナダ王立造幣局(政府系) |
| 現物引換 | 事実上、一般人は不可 | 一定額以上なら一般人も可能 |
| 信頼性 | 市場混乱時に「本当に現物があるのか?」と疑われやすい | 銀現物を市場から「物理的に隔離」していると評価される |
4. 今回のような「CMEのトラブル」が起きた時、SLVはどうなる?
もしCME(先物市場)が「銀が足りないから決済できない」というデフォルト(不履行)状態になった場合、SLVは非常に危うい立場になります。
価格の乖離: 市場にパニックが起きると、SLVの価格(紙の価格)が、街のコインショップで売っている銀の価格(本物の価格)に追いつかなくなる可能性があります。
現物転換の停止: 最悪のシナリオでは、運用会社が「現物の確保が困難」として、SLVの発行や償還を一時停止するリスクもゼロではありません。
結論:SLVは「便利な紙」
SLVは、スマホ一つで簡単に銀の価格上昇を狙える「非常に便利なツール」です。しかし、あなたが求めているのが「供給逼迫に備えた、手元に確実に残る資産」であれば、SLVはあくまで「価格を追いかけるためのデジタルな数字」だと割り切る必要があります。
本当の意味での「現物派」を目指す投資家は、SLVではなく、以下の選択肢を検討することが多いです。
物理的な銀地金・銀貨(自宅や貸金庫で保管)
PSLV(より現物に近い性質のETF)
