投資家のリスク選好が過去最高水準に:レバレッジETFの過熱感とは?
最近の株式市場では、投資家の「リスクを恐れない姿勢」が非常に強まっています。最新のデータによると、投資家が強気相場(上昇)に賭ける金額が、弱気相場(下落)に賭ける金額を圧倒しており、過去に例を見ないレベルに達しています。
今回は、この状況が何を意味するのかについて、初心者の方にも分かりやすく解説します。
「強気」対「弱気」の比率が12.5倍に到達
投資信託の一種であるETF(上場投資信託)には、市場の上昇を期待する「レバレッジ・ロング(買い)」と、市場の下落を期待する「インバース(空売り)」というタイプがあります。
現在、この2つの資産残高の比率は12.5対1となっています。つまり、市場が下がると予想して守りを固めている人よりも、市場が上がると予想して攻めている人が12.5倍も多いということです。
この数字がいかに極端であるかは、過去の節目と比較するとよく分かります。
2020年のコロナショック時には、比率は1倍以下となり、下落を予想する人の方が多いパニック状態でした。
2022年の弱気相場の下値では、おおよそ1対1でした。
そして現在は12.5対1と、過去最高水準に達しています。
なお、2025年4月の市場安値時点では4.5倍でしたが、そこからわずか数ヶ月で約3倍にまで急拡大しています。
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膨れ上がる「攻め」の資産と、減少する「守り」の資産
具体的な金額で見ると、投資家の行動の変化がより鮮明になります。
レバレッジ・ロング資産、いわゆる「攻め」の資産は、約1,460億ドル(約22兆円)に達し、過去最高水準となっています。
一方で、インバース資産、つまり「守り」の資産は、約120億ドル(約1.8兆円)まで減少しています。
2022年以降、強気に賭ける資産は4倍に増えた一方で、下落に備える資産は半分以下に減りました。現在の市場には、「株価は下がるはずがない」という非常に楽観的なムードが漂っていると言えるでしょう。
なぜ「リスク」に注目する必要があるのか?
「みんなが買っているなら安心だ」と感じる方もいるかもしれません。しかし、投資の世界では、過度な楽観には注意が必要とされています。
多くの投資家がレバレッジ、つまり借り入れなどを利用して投資効率を高める仕組みを使い、強気に傾きすぎている状態では、万が一市場が予想に反して下落し始めた場合、一斉に売り注文が出る「投げ売り」が起きやすくなります。その結果、下落幅が想定以上に大きくなるリスクをはらんでいます。
まとめ:冷静な視点を持つことが大切
現在の市場は、歴史的に見ても非常に高いリスクを取っている状態にあります。
リスク選好、つまり攻めの姿勢は過去最高水準にあります。
下落に備えている投資家は極めて少ない状況です。
そのため、わずかなきっかけで大きな変動が起きやすい環境だと言えます。
投資において大切なのは、周囲の熱狂に流されすぎず、自分自身のリスク許容度、すなわち「どれくらいの下落なら耐えられるのか」をあらためて確認することです。冷静な視点を保つことが、長期的な資産形成において何より重要になります。

