米国株投資家が知っておくべき「45兆ドルの波」:世界的なマネー増大と市場のゆくえ
現在、米国株市場への投資を考える上で、無視できない大きな変化が起きています。それは、世界全体に出回るお金の量、いわゆるマネーストックが過去最高の45兆ドルに達し、市場の流動性がかつてないほど膨らんでいるという事実です。
なぜ今、これほどまでにお金が増えているのでしょうか。そして、米国株投資家はこの状況とどう向き合うべきなのでしょうか。最新データをもとに読み解いていきます。
まず注目したいのは、米国と中国という二大巨頭が主導するマネー供給です。
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最新のデータによると、すぐに使える現金や預金を示すM1の合計は、世界全体で約45兆ドル、日本円にして約7,000兆円という驚異的な水準に達しました。
ここで重要なのは、米国株投資の主戦場であるアメリカと、比較対象としての中国の動きです。
アメリカのM1は約8兆ドルで、世界シェアはおよそ18%です。ポストパンデミック期の金融引き締めを経た後、再び過去最高水準を更新しており、米国市場には依然として強大な資金力が存在していることが分かります。
一方、中国は約16.5兆ドルと、世界シェアは約37%に達しています。現在、世界で最も多くの「狭義のマネー」を供給しているのは中国であり、その存在感は圧倒的です。
では、なぜこれほどまでにマネー供給が急増したのでしょうか。米国株への影響を考える上で、その背景を理解しておくことは欠かせません。
まずアメリカについてです。インフレが落ち着いてきたことで利下げへの期待が高まり、量的引き締め、いわゆるQTの終了(2025年12月1日)も決定しました。これにより銀行融資や投資意欲が再び活発化し、M1は過去最高水準へと押し上げられています。市場では「再び流動性が戻ってきた」という感覚が広がりつつあります。
次に中国です。中国の数字が突出して増えている背景には、2025年からの統計ルールの変更があります。これまでM1に含まれていなかった個人の普通預金などが新たに算入されたことで、数値が一気に跳ね上がりました。加えて、不動産不況を打破するための大規模な金融緩和策も、マネー急増の大きな原動力となっています。景気下支えのため、なりふり構わぬ政策が続いているのが実情です。
では、この「45兆ドルの波」は、今後の米国株市場にどのような影響をもたらすのでしょうか。米国株投資家にとって、特に意識しておきたいポイントは三つあります。
一つ目は、資産価格の下支え効果です。世界中にこれだけのマネーが溢れているということは、それだけ買い手となる資金が潤沢であることを意味します。米国株、特にテクノロジー株や高配当株など、世界中から資金が集まりやすい資産にとっては、価格が下がりにくくなる「流動性のクッション」として機能する可能性があります。
二つ目は、インフレ再燃のリスクです。お金の量が増え続けることは、長期的には通貨価値の希釈、つまりインフレにつながります。FRBが金利政策の舵取りに苦慮する場面が増える可能性もあり、これまで以上に金利動向に敏感である必要があります。
三つ目は、中国マネーの行き先です。中国で溢れたマネーの一部は、国内投資だけでなく、より安全で成長性の高い米国市場へ流れ込む可能性があります。中国の景気対策が一定の成果を上げ、世界の流動性がさらに高まれば、それは結果として米国株を押し上げる強力な追い風になるかもしれません。
最後にまとめです。
世界で45兆ドルものマネーが供給されている今、現金のまま資産を保有し続けることは、相対的に資産価値を目減りさせてしまうリスクを伴います。
米国株投資は、この巨大な流動性の波に乗り、資産の購買力を守るための有効な手段の一つです。中国の圧倒的なマネー供給量には驚かされますが、その資金が最終的にどこへ向かうのかを考えると、市場の透明性と成長性を兼ね備えた米国株の優位性は、依然として揺るがないと言えるでしょう。

