数日間で天国と地獄?S&P 500の驚くべき「10日間」の正体
新興国株や個別株など、投資にはさまざまな選択肢がありますが、多くの投資家がベンチマークとして注目しているのが、米国株指数のS&P 500です。
実は、1995年から現在までの約30年間において、たった10日間の違いが将来の資産額を数倍も変えてしまうという、非常に興味深いデータがあります。今回はゴールドマン・サックスの資料をもとに、長期投資の本質について考えてみます。
1.わずか10日を逃すだけで利益は半分以下に
まず、1995年以降のS&P 500のトータルリターンを見てみましょう。
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通常どおり市場に投資し続けた場合、トータルリターンはおよそプラス2,600%となります。一方で、この約30年間のうち、株価が最も上昇した「最高の10日間」に市場に参加していなかった場合、リターンはプラス1,200%にまで低下します。
運用期間は1万日以上もあるにもかかわらず、たった10日間を逃しただけで、最終的な利益が半分以下になってしまうのです。この数字は、「暴落が怖いから一度売って、落ち着いたら買い直そう」といったタイミングを狙う投資が、いかに難しいかを端的に示しています。
2.もしも「最悪の10日」を回避できたら?
さらに衝撃的なのが、暴落日の影響です。
仮に、歴史的な大暴落が起きた「最悪の10日間」だけを完全に回避できたとした場合、S&P 500のリターンはプラス6,400%にまで跳ね上がります。これは通常の運用と比べて約2.5倍、最高の10日を逃したケースと比べると、実に5倍以上の差になります。
暴落を避けたいと考えるのは、すべての投資家に共通する本能です。しかし、これほど大きなリターンの差が、ほんのわずかな期間の出来事によって生まれているという事実は、決して軽視できません。
3.荒れ狂う相場こそが「分かれ道」になる
データを詳しく見ると、リターンの差が大きく開き始めたタイミングが主に2回あることが分かります。
ひとつは2008年のリーマンショックです。1995年以降のワースト10日に該当する暴落日のうち、5日がこの年に集中しています。もうひとつは2020年のコロナショックで、ワースト10日のうち3日がこの年に発生しました。
皮肉なことに、相場の特徴として「最悪の日」のすぐ近くに「最高の日」が訪れることが少なくありません。パニックに陥って市場から退場してしまうと、その直後に起こる力強い反発を逃すことになり、結果として長期的な資産形成のチャンスを大きく損なってしまいます。
まとめ:私たちが取るべき戦略とは?
このデータから得られる最大の教訓は、特定の数日間が、数十年にわたる運用成績を大きく左右するという点です。
しかし、いつが最高の日で、いつが最悪の日になるのかを正確に予測することは不可能です。だからこそ、初心者が着実に資産を増やすための戦略は、非常にシンプルなものに集約されます。
ひとつ目は、市場に居続けることです。最高の10日間を逃さないためには、常に投資を継続していることが何より重要です。
ふたつ目は、暴落時に慌てないことです。最悪の日にパニック売りをせず、淡々と積み立てを続ける姿勢が、長期的には大きな差を生みます。
数十年に及ぶ投資の旅路では、必ず嵐のような相場が訪れます。しかし、その嵐を耐え抜いた先にこそ、大きな果実が待っているのです。

