中国の住宅市場はどうなっている? グラフと数字で見る「不動産低迷」の現状
はじめに:なぜ中国の住宅ニュースが重要なのか?
近年、「中国の不動産市場が低迷している」というニュースを耳にする機会が増えました。経済ニュースに詳しくない方でも、この問題は中国経済、ひいては世界経済に影響を与える可能性があるため、知っておいて損はありません。
今回は、公開された最新のデータとグラフを基に、中国の住宅市場で今、何が起きているのかを初心者にも分かりやすく解説します。
深刻化する価格下落:グラフが示す長期的な「不調」
下記のグラフは、中国の住宅価格がどれだけ変化しているかを示しています。
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まず、グラフの青線(Y/Y:前年比)を見てみましょう。この線は、今年の価格が去年の同じ時期と比べてどうなっているかを示しています。
2021年にはプラス成長、つまり住宅価格が上昇している状態でしたが、その後は大きく下落に転じました。直近の2025年11月のデータでは、新築住宅価格が前年比でマイナス2.4%の下落を記録しています。
これは、単に価格が下がっているだけでなく、その下落のスピードが速まっており、状況がより深刻化していることを意味します。
また、オレンジ線で示される前月比(M/M)もマイナス0.4%と小幅ながら下落しています。住宅価格は一時的に持ち直しているわけではなく、全体として下がり続ける傾向が続いていると言えるでしょう。
グラフ全体を見渡すと、中国の不動産市場は2021年半ば以降、一貫して下向きのトレンドが続いていることが分かります。政策的な支援や対策も行われているようですが、市場の低迷は短期的なものではなく、長期化しているのが現状です。
価格の下落だけでなく、実際に取引されている住宅の量も大きく減少しています。
住宅の販売量を床面積ベースで見ると、現在の水準は2021年と比べて約50%も下回っています。
これは、新築住宅が以前の半分程度しか売れていないことを意味します。「売れない」という状況が続くことで、不動産そのものの価値が大きく失われており、前例のない事態だと指摘されています。
中古住宅市場も例外ではありません。特に、大都市から地方都市まで、すべての都市区分で中古住宅価格が前年比で大きく下落しています。
大都市(第一層都市)では前年比マイナス5.8%、地方都市にあたる第二層・第三層都市でも、それぞれマイナス5.6%、マイナス5.8%の下落となっています。
これは、新築住宅だけでなく、すでに市場に出回っている中古物件の価値も大きく下がっていることを示しています。不動産を資産として保有してきた人々の間で、不安が広がるのも無理はありません。
経済全体への影響と解決に必要なコスト
この不動産市場の不調は、中国経済全体にも大きな影響を及ぼしています。
国際通貨基金(IMF)の推定によると、この不動産危機を解決するために、中国は3年間でGDP(国内総生産)の約5%に相当する支出が必要になる可能性があるとされています。
GDPの5%という数字は、国家が経済の安定を取り戻すために投入しなければならない、非常に大きなコストです。専門家の中には、この状況を、過去に世界経済へ深刻な影響を与えたような「危機的な状況」になぞらえる声もあります。中国の指導層は、極めて難しい局面に立たされていると言えるでしょう。
まとめ:初心者が知っておくべきこと
中国の住宅市場の現状を整理すると、次のようになります。
第一に、住宅価格は下がり続けており、特に前年比での下落スピードが加速しています。
第二に、売買が停滞しており、新築住宅の販売量は過去の水準から半減しています。
第三に、危機を解決するためには、IMFも指摘するほどの巨額な費用が必要とされています。
中国の不動産市場の動向は、今後も中国経済の回復を左右する重要な要素として注目され続けるでしょう。世界経済のニュースを見る際の一つの視点として、ぜひこの情報を参考にしてみてください。

