【初心者向け】市場に「お金の波」がやってくる?TGAの急減とFRBの動きを解説
はじめに:今、金融市場で何が起きているのか?
最近の金融市場では、「流動性」、つまり市場に出回るお金の量が大きく増える可能性がある動きが注目されています。その背景にあるのが、アメリカ政府の特別な口座である「TGA」の残高の急激な変化と、中央銀行であるFRB(連邦準備制度)による計画的な資産購入です。
本記事では、下記のグラフが示している「TGA」の動きに注目し、それが金融市場にどのような影響を与えるのかを、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
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そもそも「TGA(財務省一般会計)」って何?
「TGA(Treasury General Account)」とは、簡単に言えば、米国政府がFRB(中央銀行)に持っている「普通預金口座」のようなものです。
政府が税金の徴収などによってTGAにお金を入れる、つまり残高が増えると、その分のお金は市場から吸い上げられます。この場合、市場に出回るお金の量は減り、流動性は低下します。
一方で、政府がTGAからお金を引き出して支出を行うと、残高は減少します。そのお金は直接、金融システムを通じて市場に流れ込み、流動性を大きく高める効果があります。
このグラフは、このTGAの残高が「週ごとにどれだけ変化したか」を示したものです。グラフの中でマイナスを示す赤色のバーが大きいほど、市場に大量の現金が供給されたことを意味しています。
過去最大級の「現金注入」!TGAが780億ドル減少
実際にこのグラフを見ると、直近で非常に大きなマイナス、つまり赤色のバーが出ていることが分かります。
TGAは先週、780億ドル(日本円で約11兆円超)も減少しました。これは、今年6月以降で最大の流動性注入であり、2025年に入ってからの週次データとしては4番目の大きさにあたります。
このようなTGAの急激な減少は、市場に一気に資金を供給し、金融市場の流動性を押し上げる非常に強力な要因となります。
FRBも追加で市場にお金を供給する予定
TGAの減少による資金供給に加えて、アメリカの中央銀行であるFRBも、今後さらに市場へお金を供給する計画を立てています。
これは、「準備金管理のための国債購入」や、「MBS(住宅ローン担保証券)の償還金の再投資」といった形で行われます。
まず、米国債の購入についてです。FRBは12月12日から1月14日までの期間に、準備金を安定的に管理する目的で、約400億ドル相当の米国債を購入する予定です。
さらに、同じ期間中に、FRBが保有しているMBSの元本償還金約144億ドルについても、そのまま市場から引き揚げるのではなく、短期国債(T-bill)の購入に再投資する方針です。
つまり、TGAの減少による資金供給に加え、FRBによる計画的な資産購入が重なることで、短期間のうちに巨額の資金が金融市場へ流れ込む構図になっています。
まとめ:市場は「流動性の波」に乗るか
TGAの急減による過去最大級の現金注入と、FRBによる計画的な資産購入が同時に進むことで、金融市場の流動性は大きく高まっています。
一般的に、流動性が向上すると、株式や債券といったリスク資産(価格変動の大きい資産)にとっては追い風となり、価格を押し上げる要因になりやすいとされています。
この「新たな流動性の波」が、今後の金融市場全体にどのような影響を及ぼしていくのか。引き続き、TGAとFRBの動向には注目していく必要がありそうです。

