AIブームの裏側：急増する「AI関連企業の負債」が世界経済に与える影響

最近、人工知能（AI）に関するニュースを見ない日はありません。技術の進歩は目覚ましいものがありますが、このAIブームを支えている「資金」の動きが、世界の経済構造に大きな変化をもたらしていることをご存じでしょうか。

提供されたデータとグラフをもとに、米国のAI関連企業がどれほど多くの資金を負債、つまり借金で調達しているのか、そしてそれが世界経済にどのような影響を与えているのかを、分かりやすく解説します。

2025年、AI関連企業の債券発行額が過去最高に

AI技術の開発やインフラ整備には、莫大な資金が必要です。その資金調達手段の一つが「債券発行」です。債券とは、企業が投資家からお金を借りるために発行する、いわば借用書のようなものです。

下記のグラフが示すように、2025年、米国のAI関連企業による債券発行額は過去最高を記録しました。

具体的な数値を見ると、2025年の債券発行額は2,200億ドル（約33兆円）に達しています。これは前年の2024年と比べて1,450億ドルもの大幅な増加です。さらに注目すべき点として、この2025年の発行額は、過去3年間（2022年、2023年、2024年）の合計発行額とほぼ同じ規模となっています。

グラフでは青い部分が債券を示していますが、2025年の水準が突出して高いことが一目で分かります。

ローンを含めた負債総額も過去2番目の水準

企業が資金を調達する方法は、債券だけではありません。銀行などからの借り入れである「ローン」も重要な手段です。

2025年、債券にローンを加えたAI関連企業の負債総額は、約2,700億ドル（約40.5兆円）にまで跳ね上がりました。これは、統計史上で過去2番目に大きな規模となります。グラフでは、青い債券と赤いローンを合計した棒の高さが、2025年の負債総額を示しています。

AIブームが加熱する中、多くの企業が将来の成長を見据え、積極的な投資を行うために、負債という形で大量の資金を調達している実態が浮き彫りになっています。

世界の企業負債増加の「最大の牽引役」に

米国のAI関連企業における負債の増加は、単なる一部の企業の動きにとどまりません。世界経済全体に大きな影響を及ぼしています。

国際金融協会（IIF）によると、2025年の世界の企業負債増加における最大の要因は、この米国のAI関連負債であったと分析されています。

その結果、世界の非金融部門における企業負債の合計は、過去最高水準となる100兆ドル（約1京5,000兆円）に近づいています。AIファイナンス、つまりAI関連の資金調達ブームが、世界の負債構造を大きく塗り替え、企業負債全体を押し上げる主要な力となっているのです。

まとめ：AIブームが「負債の構図」を変えている

AI技術は私たちの生活や産業を大きく変革していますが、その技術革新を支える「お金の流れ」もまた、世界経済のダイナミクスを変えつつあります。

2025年に記録的な水準に達したAI関連企業の負債は、世界中の企業負債増加を牽引する存在となりました。技術の進歩とともに進む、この大規模な資金調達、すなわち「負債の構図」が、今後どのように世界経済へ影響を及ぼしていくのか。冷静な視点で注視していく必要があるでしょう。