📈 米・メキシコ湾岸パイプライン、LNGで18年ぶり大増強:2026年、天然ガス輸送能力が過去2番目の水準へ
はじめに:なぜ今、米・メキシコ湾岸地域のパイプラインが記録的なブームなのか?
近年、「LNG(液化天然ガス)」は、環境負荷の比較的少ないエネルギー源として、世界的に注目を集めています。
その需要拡大を背景に、アメリカ合衆国のメキシコ湾岸地域では、天然ガスを輸送するパイプラインの建設が、記録的な勢いで進んでいます。
本記事では、下記のグラフが示すデータをもとに、この大きな動きを分かりやすく解説するとともに、その背後にある政策や経済の動向についても考察していきます。
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📊 グラフが示す事実:2026年の追加能力は2008年以来の最大規模
このグラフは、米・メキシコ湾岸地域における天然ガスパイプラインの年間「追加能力」(1日あたり億立方フィート/bcf/d)の推移を示しています。このデータから、今回のブームの規模がはっきりと読み取れます。
📌 2026年の追加能力が過去18年で最高水準
グラフの右端(赤枠部分)が示す通り、2026年にはメキシコ湾岸地域で、1日あたり約180億立方フィートもの新たな天然ガス輸送能力が追加される見込みです。
これは2008年以来、実に18年ぶりとなる最大規模の年間増加です。
過去を振り返ると、これを上回る増強が行われたのは、シェールガスブームのピークであった2008年のみです。2026年の増強は、それに次ぐ「過去2番目」の水準となります。
💡 規模感:カナダの消費量に匹敵
1日あたり180億立方フィートという追加能力は、メキシコ湾岸地域全体の輸送力を約13%押し上げる規模です。
この量は、カナダ一国全体の天然ガス消費量に匹敵するほどであり、今回のインフラ拡張がいかに巨大なものであるかが分かります。
🏗️ ブームの背景:LNG輸出と「運びたい」需要の爆発
この記録的なパイプライン建設を強力に後押ししている最大の要因は、LNG輸出需要の急拡大です。
天然ガスの生産地から、液化して船積みを行うメキシコ湾岸地域のLNG基地までガスを運ぶための輸送インフラが、慢性的に不足している状況が続いてきました。
そのボトルネックを解消するため、「とにかくガスを運びたい」という需要が爆発的に高まり、今回の大規模なパイプライン建設ラッシュにつながっています。
🗳️ 政治・経済の視点:トランプ大統領のエネルギー戦略とインフレ対策
このインフラブームの背景には、市場の需給だけでなく、アメリカの政治的なエネルギー戦略も深く関わっています。
・トランプ大統領の「増産」政策とインフラ整備
トランプ大統領は就任演説などで、「drill, drill, baby, drill(掘れ、掘れ、もっと掘れ)」というスローガンを掲げ、化石燃料の増産を強く推進する姿勢を明確にしています。
今回のパイプライン増強は、その増産方針を実行に移すための物理的な基盤と言えます。
輸送能力が向上することで、アメリカの天然ガス生産能力を最大限に引き出し、国内外へのエネルギー供給力を高めることが可能になります。
・インフレ抑制に向けたエネルギーコスト低減の狙い
トランプ大統領がFRB(連邦準備制度理事会)に利下げを促す中で、経済政策上の重要テーマとなるのがインフレ対策です。
エネルギーコストはインフレを押し上げる大きな要因の一つであり、供給量の拡大と輸送ボトルネックの解消は、天然ガス価格の安定につながります。
その結果、全体的なインフレ率の抑制が期待され、利下げを行いやすい経済環境を整えるという、マクロ経済的な狙いも含まれていると解釈できます。
🌍 まとめ:新たな時代を迎える米国のエネルギー供給力
2026年に向けたパイプラインブームは、LNG市場の強い需要と、現政権であるトランプ大統領のエネルギー増産戦略が合致した結果だと言えるでしょう。
この大規模なインフラ投資は、アメリカが世界のエネルギー市場における主要供給国として、さらにその地位を強化し、国際的な影響力を高めていくことを示唆しています。

