アメリカの家計は今どうなっているのか?増え続ける「借金」

アメリカの家計は今どうなっているのか?増え続ける「借金」

はじめに:「消費者信用残高」とは?

ニュースや経済の話題で、「消費者信用残高」という言葉を目にする機会が増えています。これは、簡単に言えば、アメリカの一般家庭が抱えている「借金(ローン)」の合計額のことです。具体的には、クレジットカードの未払い残高、自動車ローン、学生ローンなどが含まれます。

今回、このアメリカの「借金」の総額に関する最新データが発表され、大きな注目を集めています。FRED(米連邦準備銀行のデータベース)が公表している「消費者信用残高の合計」のグラフを見ると、近年、この金額が右肩上がりで増え続けている様子がはっきりと確認できます。

最新データが示す「記録的な借金」

今回発表されたデータ(2025年10月)から見えてきた、特に重要なポイントを整理します。

まず、借金の総額が過去最高を更新しました。アメリカの消費者信用残高の合計は5.08兆ドル(約760兆円)に達し、これまでの最高水準を更新しています。

また、10月単月だけで借金は92億ドル(約1兆3800億円)増加しました。これは2021年から2024年までの平均的な月間増加額(約87億ドル)を上回るペースです。

さらに、2020年のパンデミック以降、借金の総額は9,940億ドル(約150兆円)も増えており、短期間で大きく膨らんでいることが分かります。

借金の内訳を見ると、「消費者信用残高」は大きく2種類に分かれます。

一つは「リボルビング信用」と呼ばれるもので、主にクレジットカードによる借金です。こちらは10月に54億ドル増加し、残高は1.32兆ドルと、2024年11月以来の高水準に達しています。

もう一つは「非リボルビング信用」で、自動車ローンや学生ローンなどが該当します。こちらは10月に38億ドル増え、残高は3.77兆ドルと過去最高を更新しました。

中でもクレジットカードによる借金の増加が目立っており、日々の生活費の支払いにクレジットカードを頼る家庭が増えている実態が浮かび上がっています。

なぜここまで借金が増えているのか?

グラフが示す通り、借金が拡大し続けている背景には、アメリカの一般家庭を直撃しているインフレの影響があります。

専門家の間では「アメリカ人は、借金を増やしてインフレと戦っている」と表現されることがあります。

食料品、ガソリン、家賃など生活に欠かせない支出が値上がりする中、給料の伸びが追いつかず、クレジットカードやローンで不足分を補っている家庭が多くなっています。

さらに問題を深刻にしているのが、金利の高さです。

クレジットカードの平均金利は現在も約22.8%と、歴史的に見ても非常に高い水準にあります。アメリカの中央銀行であるFRBが2024年9月以降に利下げを行っているにもかかわらず、クレジットカード金利はほとんど低下していません。

つまり、クレジットカードで借金をした人々は、高金利の負担を背負い続けている状況です。借金が増えるだけでなく、その利息負担も重くのしかかり、家計の圧迫は一段と強まっています。

まとめ:読み取るべきポイント

このデータは、アメリカ経済の消費が依然として活発であることを示す側面がある一方で、多くの一般家庭が生活を維持するために借金に依存せざるを得ない厳しい現実を浮き彫りにしています。

特に、金利が高止まりしたままのクレジットカード債務が拡大している点は、個人の債務不履行や破綻リスクを高めかねず、今後のアメリカ経済を見通す上で極めて重要な注目ポイントだと言えるでしょう。