住宅ローンを考えるすべての人へ:日銀利上げで再考したい「元利均等」と「元金均等」のリスクとメリット
1. はじめに:日銀の金利政策と住宅ローンへの影響
近年、日本銀行(日銀)の金融政策の動向、特に「利上げ」の可能性が、住宅ローンを組んでいる、またはこれから組む予定の方にとって大きな関心事となっています。
市場金利が上昇すれば、特に変動金利型の住宅ローン金利にも影響が及びます。金利が上がると、毎月の返済に占める「利息」の割合が増えるため、結果として総支払額が増加します。この金利上昇の影響を特に受けやすいのが、ご自身の返済方式です。
2. 要注意!長期返済における「元利均等返済」の落とし穴
多くの人が選ぶ元利均等返済は、「毎月の返済額が一定で家計の管理がしやすい」というメリットがあります。しかし、この方式には、金利が上昇する局面で特に気をつけたいメカニズムがあります。
💡 補足説明:元利とは?
「元利(がんり)」とは、「元本(がんぽん)」と「利息(りそく)」を合わせた略語です。
元本(元金):借りたお金そのものの額。
利息:借りたお金に対して支払う使用料。
したがって、元利均等返済とは、毎月の「元本+利息」の合計額が均等(一定)になるように設定された返済方式を指します。
2-1. 最初のうちは元金がほとんど減らない
元利均等返済では、返済開始直後の毎月の返済額は、その大半が利息の支払いに充てられます。元金(借りたお金そのもの)の返済に回る金額はごくわずかです。
特に30年、35年といった長期の返済計画であるほど、この傾向が強くなります。利息は「残っている元金」に対してかかるため、元金がなかなか減らないと、いつまでも高水準の利息を支払い続けることになります。
2-2. 金利上昇で「残債が増える」リスク
変動金利が上昇し、毎月の返済額は一定(例:5年ルール適用)に据え置かれても、利息の負担が増えることがあります。このとき、毎月の返済額で利息分さえ賄えなくなると、未払いの利息が残りの借入残高に上乗せされてしまいます。
これが、いわゆる「残債がほとんど減らない」「残債が増加する」という状態です。利息負担の増加を後回しにしているだけであり、住宅ローン完済までの期間で見ると、総支払利息は大きく膨らみます。
一部の金融機関で、こうした返済計画を多数取り扱っているという指摘は、この金利上昇時のリスクを借主が十分に理解しないまま長期契約を結んでいる状況への懸念を示していると言えます。
3. 個人にこそ推奨したい「元金均等返済」のメリット
住宅ローンは、原則として金利部分を事業の「損金(経費)」として扱えない個人にとっては、支払い利息を最小限に抑えることが経済的負担の軽減に直結します。そこで、ぜひ検討したいのが元金均等返済です。
| 特徴 | 元金均等返済 |
|---|---|
| 毎月の返済額の推移 | 開始時が最も多く、時間とともに減少する |
| 元金の減り方 | 毎月一定額ずつ元金が着実に減っていく |
| 最大のメリット | 総支払利息額が、元利均等返済よりも必ず少なくなる |
元金均等返済は、返済開始当初の負担が元利均等返済よりも重くなりますが、残高が早く減るため、完済までのトータルの利息負担を大きく軽減できます。金利上昇時も、元金が早く減っている分、利息計算のベースが小さくなっているため、相対的にリスクを抑えやすいと言えます。
4. まとめ:ご自身の家計状況に合った選択を
日銀の利上げは、特に長期かつ変動金利の住宅ローンを組む人にとって、返済方式を見直す良い機会です。
家計に余裕があり、総支払利息を最小限に抑えたい個人:
初期の返済額が多くなることを許容できれば、元金均等返済が最も経済的合理性が高い選択肢です。初期の返済負担を抑えたい人:
毎月の返済額を一定に保つ元利均等返済が適していますが、将来の金利上昇によるリスクを理解し、繰り上げ返済などの対策も視野に入れる必要があります。
ご自身の家計状況と、将来の金利変動リスクへの許容度を慎重に比較検討し、納得のいく返済計画を立てましょう。

