⚾ 山本由伸投手を支える「型にはまらない体作り」の秘密
〜柔道整復師・矢田修氏の哲学とメソッド〜
山本由伸投手の卓越したパフォーマンスと耐久性は、従来の筋力強化中心のトレーニングとは一線を画す、独自の体作りによって支えられています。その根幹にあるのが、柔道整復師である矢田修氏が提唱する「体を目覚めさせる」哲学と、全身の連動性を高める「BCエクササイズ」です。
本記事では、この独創的な体作りにおける「考え方」「具体的な方法」「呼吸の重要性」について解説します。
1. 🏋️♂️ 筋力強化よりも「連動性」を重視する哲学
矢田修氏の体作りは、単に筋肉を大きくしたり、重いものを持ち上げたりすることではありません。身体が持つ本来の機能を引き出し、無駄なく効率的に動ける状態に整えることを目的としています。
核心的な考え方
ウエイトトレーニングからの脱却
山本投手は、パフォーマンス向上を目的とした高負荷のウエイトトレーニングをほとんど行いません。これは、「筋肉を盛る」ことよりも「体の使い方を整える」ことが重要であるという哲学に基づいています。「体を目覚めさせる」
身体が持つ本来の感覚や可動域を呼び覚まし、全身を一本の鎖のように連動させる意識を養います。これにより、力みを抑え、最小限の力で最大のパフォーマンスを発揮できるようになります。姿勢と動作の連鎖
「正しく立つこと」をすべての動作の基本とします。「正しく立てなければ、正しく投げられない」という考えのもと、土台となる姿勢とバランス感覚を徹底的に修正します。感覚の重視
「形は感覚の結果であって原因ではない」とし、正しい動作を繰り返す中で生まれる身体内部の微妙な「ずれの修正」の感覚を磨くことに重点を置いています。
2. 🧘 BCエクササイズにみる具体的なアプローチ
山本投手が取り入れている中心的トレーニングが、矢田氏が考案したBCエクササイズです。これは筋力を直接強化するのではなく、身体の内側の感覚と動作のつながりを整えるメソッドです。
BCエクササイズの特徴
インナーマッスルの活性化
400種類以上ものバリエーションがあるとされるこのエクササイズは、身体の深部にあるインナーマッスルを繊細に刺激し、体幹の安定性を高めます。動作の質と集中
動作は小さく、ゆっくりと、高い集中力をもって行われます。重心の流れや身体の軸の感覚を微細に養い、日常生活や投球動作における無意識の「癖」を修正します。目的
動きの可動域、バランス、しなやかさを改善することに主眼があり、その結果として、山本投手の投球フォームは「重心を整え、身体の連動を効かせた」効率的なものへと進化しました。
3. 🌬️ パフォーマンスの土台を築く「呼吸」の重要性
この体作りにおいて、「呼吸」は動作の質を決定づける土台として極めて重要視されています。単なる生理現象ではなく、体幹の安定とリラックスを促すための意識的なトレーニングです。
呼吸がもたらす効果
| 項目 | 具体的な効果 |
|---|---|
| 体幹の安定 | 正しい横隔膜の動き(腹式呼吸)によりインナーマッスルが活性化し、投球中の軸が安定。 |
| 力みの除去 | 深く、長い呼気は不要な緊張を取り除き、しなやかな動きを可能にする。 |
| 自律神経の調整 | 深い呼吸は副交感神経を優位にし、試合中でも冷静さと集中力を保つ。 |
| 動作との同調 | 呼吸と動作を連動させることで、力を発揮する瞬間に体幹が締まり、効率が向上。 |
実践される呼吸法の基本
鼻呼吸の徹底
横隔膜を深く使わせるため、鼻から吸って鼻から吐くことを基本とします。腹式呼吸の意識
胸ではなく腹部の深部まで息を入れ、長く細く吐き切ることで体幹深部の締まりを養います。動作との連動
負荷をかける、または体幹を安定させたい瞬間に意識的に息を長く吐き出し、動作をサポートします。
まとめ
山本由伸投手の体作りは、目に見える筋肉量ではなく、身体内部の「連動性」「感覚」「呼吸」といった本質的な要素に焦点を当てています。矢田修氏の指導のもと、地道なエクササイズと意識改革を続けることで、山本投手は「強く投げる」技術ではなく、「身体の機能を最大限に活かして投げる」術を身につけ、トップレベルでの活躍を可能にしています。

