サラリーマンから「歩く探求者」へ  ~宮本常一と伊能忠敬に学ぶ、第二の人生の設計~

サラリーマンから「歩く探求者」へ  ~宮本常一と伊能忠敬に学ぶ、第二の人生の設計~


はじめに:「埋もれた魅力」に光を当てる志

「地方には、まだまだ埋もれた魅力がたくさんある。これに光を当て、日本を活性化させたい。」

これは、「一隅を照らす」という志とも言える想いです。

民俗学者・宮本常一が全国を歩き、庶民の暮らしを記録した情熱。
そして、商人から転身し、人生の後半で精密な日本地図を完成させた伊能忠敬の偉業。

この二人の“歩く探求者”に共鳴し、第二の人生を模索しています。
しかし同時に、多くの人が直面するのが「経済基盤」との両立という現実的な課題です。

では、宮本と伊能は、どうやって理想と現実を両立し、偉業を成し遂げたのでしょうか。


1. 宮本常一と伊能忠敬 ― 活動の核心と共通点

まずは、お二人の活動の本質と、現代に生きる私たちが学ぶべき共通点を整理してみましょう。

人物活動の目的と成果活動を可能にした要素
宮本常一全国を歩き、人々の生活・文化・知恵を調査・記録。その成果を地域振興や観光開発に活かした。徹底した「歩く量と記録」、庶民への深い愛情、活動を支える組織・職位との連携。
伊能忠敬50歳から測量を開始し、実測に基づく精度の高い日本地図を完成。揺るぎない「科学的探求心」、活動前の強固な「経済基盤」、活動の公的事業化。

両者に共通するのは、
「自らの足で歩き、記録する情熱」と、
「偉業を支えるための仕組みを自ら構築したこと」です。


2. 最大の課題:経済基盤の確保と乗り越え方

「埋もれた魅力を掘り起こす」活動は、すぐに収益を生むとは限りません。
この現実的な課題を、二人はそれぞれ異なるアプローチで乗り越えました。


【伊能忠敬のアプローチ】

― 経済基盤の確立と自己投資 ―

伊能忠敬は、測量を始める前の約50年間、商人として莫大な財を築きました。
その測量活動は当初、幕府からの支給がわずかだったため、現代換算で数千万円にも及ぶ自己資金を投じています。

「志の実現には、まず活動を支える経済的な土台を自力で築くこと。」

伊能の生き方は、そう私たちに教えてくれます。
彼の測量の精度が認められた後、活動は幕府の公的事業として継続性を持ち、人生後半の輝きを放ちました。


【宮本常一のアプローチ】

― 活動の事業化と組織連携 ―

宮本常一は、大学教授や研究機関の一員として活動する傍ら、
旅行会社「近畿日本ツーリスト」の日本観光文化研究所を主宰し、
研究を「仕事」として成立させました。

彼は、単なる民俗研究にとどまらず、
調査結果を地域開発・観光振興・文化継承といった具体的な形に落とし込みました。
その結果、彼の探求は社会的にも経済的にも持続可能な活動へと昇華したのです。


3. 「一隅を照らす」活動を始めるための現代的戦略

では、私たち現代のサラリーマンが、
「埋もれた魅力を掘り起こす活動」と「経済的安定」を両立するにはどうすればいいのでしょうか。
宮本と伊能の教訓を、現代のライフスタイルに置き換えてみましょう。


① 現職を「最終準備期間」と捉える(忠敬に学ぶ)

早期リタイア後の活動費用と生活費を明確に試算し、
現職時代を“準備期間”として徹底的に蓄財・計画すること。

経済的な土台を築くことで、活動初期の収益不安を乗り越えられます。
伊能がそうであったように、「第二の人生」は準備の上に成り立つのです。


② 「副業・週末活動」で専門性と収益性を磨く(宮本に学ぶ)

週末や休日を使って、特定のテーマ(例:地域の食文化、伝統技術、古民家など)を探求し、
小さく始めて、継続的に深めることをおすすめします。

  • 専門性の確立:知識・写真・文章・デジタルツールを磨く

  • 試験的な収益化:ブログやSNS、電子書籍で発信

  • 地域連携:調査結果を地域団体や企業に提案し、仕事につなげる

これにより、「好きなこと」が「価値を生む活動」に変わっていきます。


③ 活動を「地域の課題解決」に結びつける

宮本常一のように、掘り起こした魅力を地域課題の解決に活かす視点を持ちましょう。
たとえば以下のような形です。

  • 地域資源を活かした「観光コンテンツ」づくり

  • 地元企業・自治体とのコラボによる「ブランド化」

  • 調査をもとにした「ストーリーマーケティング」支援

活動が地域経済の利益につながると、自然と協力や委託の機会も生まれます。


おわりに:歩きながら人生を再設計する

宮本常一と伊能忠敬。
二人に共通するのは、情熱・継続力・徹底した記録です。

あなたも今、「基盤づくりの時期」にいるのかもしれません。
焦らず、着実に準備と実践を積み重ねれば、
必ずや第二の人生で「一隅を照らす」生き方を実現できるでしょう。


歩きながら学び、記録し、伝える。
その姿こそ、現代の「歩く探求者」の原点なのです。