急激に進む円安【誰の意見を参考にすれば良いか見極めることが重要】
直近1ヶ月で、円安が急激に進んでいます。
直近1年で見ても、右肩上がりに円安が進んでいることが一目瞭然です。
過去40年を振り返ると、1980年代は1ドル250円程度であり、
1980年代から1990年にかけて、急速に円高が進み、
その後、1990年から現在まで、おおよそ1ドル80円から120円の
範囲内での安定した推移となっています。
出典:グーグルファイナンス
円安の原因や今後の為替見通しについて、様々な意見があります。
専門家と称する人の数だけ意見があると言っても良いくらいです。
未来を確実に見通すことは不可能ですが、
誰の意見を参考にすれば良いか見極めることが
現実的な対応策として重要になります。
私は、「加谷珪一さん」の意見が最も参考になると考えています。
Newsweek 加谷珪一 「経済ニュース超解説」の連載で、
円安に関する記事が出たときは必見です。
今回の記事には、私が認識できていることは全て記載されていました。
非常に分かりやすい記事だと思います。
加谷さんの能力が高いことは勿論ですが、
「長期的に円安が続く」という状況が
確定的であることも寄与していると考えられます。
円建てだけで資産を保有するのではなく、
ドル建て資産の比率を増やしていく必要がありますね。
このところ急ピッチで円安が進んでいる。投機筋の影響も大きいが、円安という流れそのものは日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)から予想されていたことである。今、起こっている円安を理解することは、日本経済を理解することと同じであり、今後の推移についてもある程度、冷静に受け止められるだろう。
円安の直接的な原因はアメリカが本格的な金利引き上げフェーズに入ったからである。同国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備理事会)は金融政策の正常化を進めてきたが、インフレが予想以上に進み、ウクライナ問題も加わったことから金利の大幅な引き上げを余儀なくされた。
一方、日銀は量的緩和策からの手仕舞いができず、金利を上げられない。日米の金利差が拡大すれば、当然のことながら円は売られやすくなる。金利差の拡大が一時的であれば、やがて相場も落ち着くはずだが、今回はそうならないかもしれない。
その理由は、両国の金利差は構造的なものであり、今後も継続すると予想する専門家が多いからだ。
アメリカのインフレは今のところ景気拡大に伴う需要拡大要因と、石油価格の高騰という物価要因が混在している。米国経済は基本的に好調なので、金利を上げてもすぐに景気が腰折れする可能性は低く、利上げと国債売却を通じて量的緩和策から脱却しつつ、インフレを抑制する道筋が見えてくる。
日本の場合、量的緩和策を実施しても景気は全く回復せず、日銀は大量の国債を抱えた状態で身動きが取れない。政府も1000兆円の債務を抱えているので、ここで金利が上がってしまうと、政府の利払いが急増してしまう。
この状況は短期間で解消できるものではなく、日米の金利差拡大は今後も継続する可能性が高い。日銀の黒田東彦総裁は金融緩和策を継続する方針を示しているが、現実には継続するしか選択肢がないと考えたほうが自然だろう。
この状況では、日本の相対的な金利は低く推移し、それによって円安がさらに進むシナリオが有力である。一般的に円安は輸出企業に有利となり、輸入企業には不利になる。
日本企業に競争力があれば円安は経済にとってプラスに働くが、競争力が低下した現状では交易条件の悪化をもたらすため、経済全体にとってマイナスの影響が大きい。
今、進んでいる円安は慢性的な低成長や企業の衰退など、いわゆる国力の低下を原因としたものであり、構造的なものと考えてよい。そうだとすると、その解消には長い時間が必要であり、為替の動きに逆らうのは難しいとの結論にならざるを得ない。
一部からは、現状打開策として円高待望論が出ているようだが、通貨安を防衛する場合、外貨準備の範囲でしか介入できないので、市場から政府の限界が見透かされてしまう。円安の進行そのものは受け入れた上で、経済への影響を最小限に抑えるとともに、通貨安が続いても一定の成長が持続できるよう国内市場を改革する必要がある。