加谷珪一さんの経済ニュース超解説
Newsweekに連載している加谷珪一さんの経済ニュース超解説がとても勉強になります。
備忘と後学のため、抜粋メモを残していきます。
2021年08月31日号
為替相場は動いていないが、実は日本円の価値はどんどん低下している。それが意味するのは、日本人が貧しくなっているという現実
ここ数年、日本円の為替レートに大きな変動が見られない。だが現実には実質的な円安が進行中で、日本人の購買力は年々低下している。物価の違いを考慮すると日本円は1970年代の水準まで(名目上の取引レートとしては1ドル=250円程度)円安になったと考えることも可能だ。
一般に為替レートは物価水準に応じて変化するといわれる(購買力平価)。だが、為替レートは物価だけでなく、投機的な需要や通貨全体の信頼度、輸出入に伴う実需などさまざまな要因で決まる。何らかの理由で為替レートが大きく変動しないこともあり、今の日本円はまさにそうした状況といってよい。
為替が変動しなくても、日本の物価が横ばいで推移し、海外の物価が上昇した場合には、為替が安くなったことと似たような影響が及ぶ。1ドル=100円で、海外から2ドルの商品を輸入すれば、日本人は200円を支払う必要があるが、海外の商品が3ドルに値上げされれば、為替レートが同じでも300円払わないと商品を購入できない。
為替がいつ動きだすのかは誰にも分からないので断言はできないが、当面、日本円に大きな動きはなく、輸入コストの増大によって経済格差を実感する流れが続くだろう。
為替の数字が見かけ上、変わっていないことだけを見ていればOKという考え方が極めて危険と再認識しました。表面的な数値だけを見て、中身を考えていないことが非常に多いと、改めて反省しています。平均値だけ見ていれば、全体像が分かるという勘違いと同じことだと思います。
為替影響(実質的な円安)によって、日本人が相対的に貧しくなっているという事実は、日本の中だけで見ていては気づかないまま時間が流れていくように思います。海外から日本を見てみるなど、俯瞰的な視点が必要です。災害などのようにある日突然大きな変化があるのではなく、徐々に変化していくものは気が付きにくいので、要注意です。カネだけでなく、健康問題もそうだと思います。
日本人が相対的に貧しくなっているならば、日本企業に勤める人々の給与収入も上がらないどころか、相対的に低下することはほぼ不可避かと思います。
対策としては、アメリカ株投資で配当収入を得て、その収益を使って、「安いニッポン」で生活するというのが現実的でしょうか。いずれにせよ、常に前提条件が変わるということを認識して、日々、考えて動いて行くしかありません。