WTI原油の底を見極める:ワイコフ理論とCVDを駆使した「本物の反発」の捉え方
「安値で買いたいけれど、どこが底か分からない」「反発したと思ったら、さらに下落して損切りさせられた」……。原油相場のようなボラティリティの激しい市場で、多くの個人投資家が直面する悩みです。
しかし、チャートの裏側で起きている「注文の偏り」と「大口投資家の仕掛け」を読み解くことができれば、相場は全く違った景色に見えてきます。今回は、現在のWTI原油4時間足を舞台に、プロが意識する「ワイコフ理論」と「CVD(累積出来高デルタ)」を組み合わせた高度なトレード戦略を詳しく解説します。
![]()
1. 相場の本質を突く「ワイコフ理論」とは?
100年以上前にリチャード・ワイコフによって提唱されたこの理論は、現代のAIやアルゴリズムが支配する相場でも驚くほど機能します。その核心は、「大口投資家(コンポジット・マン)は、本格的に上げる前に必ず個人投資家の損切りを誘発させる」という点にあります。
蓄積(Accumulation)フェーズの構造
相場が下落を終え、上昇に転じる前には必ず「蓄積」と呼ばれる期間があります。ここで大口は、安値でひっそりと買いを集めます。
SC(セリングクライマックス): 恐怖による投げ売りが発生。
AR(オートマチックラリー): 売りが枯れて自然に反発。
ST(セカンダリーテスト): 再び安値を試し、底固さを確認。
「スプリング(Spring)」という最大のチャンス
今回のWTIチャートで最も注目すべきがこの「スプリング」です。
これは、サポートライン(62.20ドル付近)を一瞬割り込み、「もう一段下がる」と思わせてロング勢に損切りをさせ、ショート勢に新規売りを仕掛けさせる動きです。
しかし、その直後に猛烈な勢いで価格が戻る(下ヒゲ)ことで、ショート勢は「踏み上げ」られ、結果として価格を押し上げる燃料となります。
豆知識: ワイコフはこの動きを「流動性の確保」と呼びました。大きな買い注文を執行するには、誰かの大きな売り注文(損切り)が必要だからです。
2. 出来高の真実を暴く「CVD(累積出来高デルタ)」
価格チャートだけでは分からない「中身」を教えてくれるのが、CVD(Cumulative Volume Delta)です。
CVDとは何か?
通常の「出来高」は、売買の合計量を示します。一方、CVDは「成行買い」と「成行売り」の差(デルタ)を積み上げたものです。
CVDが上昇: 「今すぐ買いたい(成行買い)」勢力が強い。
CVDが下落: 「今すぐ売りたい(成行売り)」勢力が強い。
強気ダイバージェンスの魔法
今回の分析で最も鋭いのが、価格とCVDの逆行現象(ダイバージェンス)への注目です。
価格は安値を更新している(または停滞している)。
しかし、CVDは右肩上がりに上昇している。
これが意味するのは、「表面上は弱気に見えるが、水面下では大口が成行売りを全て吸収(Absorption)し、さらに積極的に買い上がっている」という事実です。この現象が確認できた時、統計的な成功率は飛躍的に高まります。
3. 実践!WTI原油4時間足のシナリオ分析
現在のWTI(2026年3月限)の具体的なセットアップを見ていきましょう。
現在のポジション:平均建値62.036ドル(ロング)
このエントリーポイントは、ワイコフ理論における「スプリング」の直後、あるいはCVDのダイバージェンスを確認した絶好のタイミングです。
ターゲット価格:67.00ドル
なぜ67ドルなのか? それは、今回の「下降ウェッジ(ウェッジ型の保ち合い)」の上限であり、過去に強い売り圧力が確認された「レジスタンス帯」だからです。
期待値の算出
通常のウェッジ上抜け: 成功率 約55%
スプリングの発生を伴う場合: +10%
CVD強気ダイバージェンスの確認: +10%
合計期待値: 約75%
これほど根拠が重なる場面は、1ヶ月に数回あるかないかの「勝負所」と言えます。
4. TradingViewでのCVD表示・設定ガイド
この分析を自分のチャートでも再現したい方のために、TradingViewでの設定方法を解説します。
ステップ1:インジケーターの追加
上部メニューの「インジケーター」をクリック。
検索窓に「Cumulative Volume Delta」と入力。
「累積出来高デルタ (TradingView公式)」 またはコミュニティスクリプトの評価が高いもの(LazyBear氏など)を選択。
ステップ2:設定の最適化
CVDの歯車アイコン(設定)を開き、以下の調整を行います。
リセット設定: デフォルトの「セッション」を「なし(None)」または「ウィークリー」に変更。これにより、数日間にわたる長期的な買い集めの動きが見やすくなります。
スタイル: カラム(棒グラフ)形式にし、プラスを緑、マイナスを赤に設定すると視認性が向上します。
5. 利益を最大化するための出口戦略とリスク管理
相場に絶対はありません。高い成功率を誇るこの戦略でも、出口の管理が重要です。
利確(テイクプロフィット)の考え方
ターゲットの67ドルを一気に狙うのも良いですが、「下降ウェッジの上値抵抗線」を抜けた直後の64ドル付近で半分を利確し、残りの半分を67ドルまで伸ばす「分割利確」が精神衛生上もおすすめです。
損切り(ストップロス)の置き場所
スプリングの起点となった直近最安値(61ドル台前半)を明確に下回った場合は、ワイコフのシナリオが崩れたと判断し、速やかに撤退する必要があります。
CVDの変化を監視する
価格が上昇し始めても、CVDが横ばいになったり減少したりし始めたら、それは「上昇の燃料(買い意欲)」が尽き始めたサインです。ターゲットに到達する前であっても、CVDの失速を確認したら利益を確保する柔軟性が、勝ち続けるトレーダーの条件です。
まとめ:データが語る「勝てる理由」
今回のWTI原油の分析は、以下の3つの柱で構成されています。
ワイコフ理論: 市場心理と大口の罠(スプリング)を読み解く。
チャートパターン: 下降ウェッジというエネルギー充填期間を確認。
CVD: 価格の裏に隠された「本物の買い」を数値化。
これらが一致した時、トレードは「ギャンブル」から「期待値に基づいた投資」へと進化します。
「shorts rekt(ショート全滅)」の後に来る本格的な上昇トレンド。この波を乗りこなすために、まずはご自身のチャートにCVDを表示させ、価格とのズレ(ダイバージェンス)を探すことから始めてみてください。

