加谷珪一さんの経済ニュース超解説
Newsweekに連載している加谷珪一さんの経済ニュース超解説がとても勉強になります。備忘と後学のため、抜粋メモを残していきます。
2021年09月15日号
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、全世界的に貯蓄額が増大している。経済活動の停滞によって消費が抑制されたことや、給付金など各種支援が行われたことが原因であり、貯蓄の増加そのものは予想されていた。重要なのは増えた貯蓄をどう活用するかだが、その点において日本には大きな課題がある。
日本では給付金と企業支援の両方が実施されたが、欧米と比較すると規模が小さく、家計は完全に守りに入っている。日本の貯蓄増加の多くは、やはり消費の減少分と考えてよいだろう。
経路に違いはあるものの各国とも貯蓄が増えているという話だが、問題は過剰貯蓄を次の成長にどう生かすのかである。米バイデン政権はコロナ対策と次世代技術への先行投資を兼ねて、総額で約450兆円もの財政支出を計画している。
投資として支出された資金は、その年におけるGDPへの貢献としては金額分だけだが、次世代の成長を生み出す原資であり、長期にわたって効果を発揮する。
日本の場合、企業に過剰貯蓄が存在するが、設備投資には回っておらず、基本的に国債購入を通じて財政赤字の補塡に充当されている。欧米のような巨額投資計画も立案されていないので、このまま貯蓄の増加と財政赤字拡大が続く可能性が高い。
各国の将来は、今のタイミングで大型投資を決断できるのかに懸かっているといっても過言ではない。日本はワクチン接種で大幅な遅れが生じるなど目先の対応で精いっぱいな状況だが、時代の変化は待ってくれない。この重要なタイミングで次世代に向けた大型投資に資金が回っていないのは、日本経済の将来にとって大きなマイナス要因となる可能性がある。
日本に住んで、旧来型の日本企業に勤めていると気づき難いのですが、「世界の流れ」から日本は取り残されつつあり、その結果、徐々に貧しくなっているのは間違いないと思います。「気づき難い」というところがポイントですが、まさに「茹でカエル」のような状態になっています。
世界的なカネの流れ、イノベーションの流れ、社会変革の流れなど、「大きな流れ」に逆らいながら進むのは並大抵のことではありません。そもそも流れに逆らっていることにすら気づいていないという懸念もあります。
何でもかんでもアメリカや欧州の真似をすれば良いわけではないですが、少なくともアメリカや欧州の動きについてベンチマークはすべきですし、学べるところは学ぶべきだと思います。日本独自の社会事情もあるので、真似をする必要がないところも多々あるとは思いますが、少なくともベンチマークはすべきです。ベンチマークをすること自体はノーリスクですし、コストも大きくかからないと思います。
アメリカや欧州に比べて、日本は現時点でもかなり不利な位置にいる、さらに将来計画も劣後しているとなると、暗澹たる気持ちになります。ただ、国家レベルでの変革は時間を要しますが、個人レベルの変革はすぐにできます。できるところから直ぐにやっていくという姿勢は大切かと思います。具体的には、成長力のあるアメリカ企業への投資、そこから得たリターンの活用、というのが現実的な対策かと思います。